常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

2拝2クラップス~結いのおとを訪ねて~

今年こそ、と思っていた「結いのおと」に初めて行ってきた。

舞台は結城市。茨城県西部で、常陸国ではなく下総国に属した。
「結いのおと」は同市の中心部を舞台とする、知る人ぞ知る野外フェスである。

https://www.yuinote.jp/

毎度、気になるアーティストが出演するのでいつか行きたいと思っていた。
その気持ちが前のめり過ぎて2日間分のチケットをゲットしたのに、
スケジュール的にどうしても初日は不可能なことが判明。
なので2日目の10月10日、南アジア学会でのオンライン発表を終えて
肩の荷が下りたところで西北へと向かった。

「結いのおと」のライブ会場は結城市に点在する歴史的建造物などを用いている。
今回まず訪れたのは結城紬問屋である「株式会社奥順」の新座敷。
古い店舗の一室を中庭に向かって解放してステージとしている。
お目当ては元キリンジの堀込泰行さん。

思えば大学時代、タワレコ新宿店のレコメンドコーナーで
彼らのデビューアルバム「ペーパードライバーズミュージック」に出会ってからだから、
かれこれ20年以上になる。
あの印象的なイントロは何か、新しいことが始まりそうな気持にさせてくれる。
いまはキリンジを離れてソロとして活動している堀込さんの歌声を聴けるとあっては
行くしかあるまい。

10月半ばにしては随分暖かい午後、結城紬に身を包んだ姿で堀込さんは登場。
その歌声を聴いた途端「あの声だ」と思った。
「ペーパードライバーズ…」の歌い出しを初めて聞いた時と同様に、
久しぶりに鳥肌が立った。

何曲目だっただろうか、堀込さんいわく「初めてこちらから手拍子を要求した」という
時、自分の拍手が他の人より浮いていることに気づいた。
しまった、クラップのはずが柏手(かしわで)になっていた。
みんなが「パチッ」的な音なのに、自分だけ「ポウンッ」的な感じになってる!
職業柄拍手の音は普通の人より良いことに自信はあるのだが(同業者の中では普通)、
ライブではやや場違いなサウンドだ。
慌てて普通の手拍子に切り替えたが、皆さんは特に気にならなかったようだ。

伸びやかな歌声とギター一本で紡がれた楽曲たちの余韻が残る中、
次の会場へ。

慶応3年(1807)創業の酒蔵「武勇」前の特設ステージに躍り出たのは
移動中に聴いていたラジオでクリス・ペプラー氏が「こんないい奴はいないんじゃないか」と評していたSTUTS。

「Ride」から「夜をつかいはたして」まで、キラーチューンの連続である。
松たか子さんこそ登場しなかったものの、
異なるタイムテーブルで出演していた銀座dopenessや鈴木真海子さんも特別に参戦。
STUTSくん(君づけにしたくなる感じが良く分かる)の人柄が、
久しぶりに大手を振って大人数のライブに身を置ける喜びを分かち合う人々を繋いでいるようだった。
近くで聴いていたラッパー風の子供連れも、すごく楽しそう。
今回は職業のことは気にせずに手を打ち、体を動かしつつ音楽を楽しんだ。

帰り際、ジェラート屋のお姉さんに話しかけられた。
「もしかして、昨日も『結いのおと』に来てました?」
「いや、チケットはあったんですけど、来られなかったんですよ」
「あ、そうだったんですね。昨日〇〇で隣になった方にすごくそっくりだったから。
 私もシマシマの服だったから隣同士でシマシマになっちゃってごめんなさいって思ったんです」
(注:〇〇は「魚民」に聞こえたが自信はない)
おお、私のTシャツもシマシマなら、お姉さんのユニフォーム(なのかな?)もシマシマ。
しかし今日シマシマを着ている私が、さすがに昨日もシマシマなことはあるまい。

なんにせよ、「いい街だぜ結城。また来るぜ『結いのおと』」とおまけしてもらったジェラートを舐めつつ思った。

画像提供:結いプロジェクト

ページ上部へ戻る