常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

かくかくしかじか

冬の気配になりつつも、まだ境内の紅葉のグラデーションが美しく、名残の秋を感じます。あまり寒くないままお正月になればと毎年思うのに、その頃にはすっかり冬の寒さになっているのも毎年のことです。

正月の事始め(正月準備を始める日)は関東では12月13日でしょうか。しかし当然のことながら11月も祭事や催しの傍らにお正月準備が始まっています。

「採用担当の石崎です」なんて言っちゃって、11月は年末年始の臨時巫女さんの面接、面接、面接。今年は応募多数で、11月に募集を締め切るスピードでした。それにしても、10代、20代の乙女たちのなんとしっかりしていること。失敗することや上手く出来ないことなんて気にせず、若いうちの経験として全力で真剣に楽しんで欲しいと思っています。(参拝者にご迷惑にならないようにね。)

神様にお仕えするという意味では、神職や巫女のように人間ばかりとは限りません。

ご存知、お稲荷様の狐、八幡様の鳩のような動物たちは神様のお使い。神使(しんし)や眷属(けんぞく)と呼ばれます。当宮にはいません。個人的には時々境内で見かけるハヤブサやフクロウを勝手に神秘的に感じていますが。

私の推し神使は、鹿です。先日、正倉院展を観るために訪れた奈良。修学旅行の団体もいて賑わう定番の東大寺参道では、鹿せんべいを片手に制服の学生たちが鹿と戯れていました。

武甕槌命が常陸国の鹿島神宮から白鹿にお乗りになり御蓋山(春日山)へ降り立ちお祀りされたのが春日大社の御由緒。そのため「神鹿」として大切にされ、全国でも類を見ない形態で人と鹿が共生しています。

プロフィールにもあるように、春日大社さんが大好きです。語り尽くせない魅力のうちの一つが参道。JR奈良駅辺りから路地に寄り道したり、ならまちをぶらぶらしたりして拝殿まで3㎞くらいは裕に歩きます。奥の院へ進めばさらにです。よくある駅前の風景から古民家の町並みの風情を楽しみ、お気に入りの春日灯籠を探してキョロキョロしながら歩く林の参道へと、その変化が楽しくもあり清々しい。

そして必ず訪れる「私と鹿」だけの瞬間。奈良市民にしてみたら珍しくもないでしょうし、だからなんなんだなのですが、あの空気感がいいのです。そっと頭を撫でさせてくれたり、かわいい!神使さんなので、本当は気軽に触れてはいけないのかもしれませんが、でもかわいい!

奈良を訪れた際には早朝か夕刻など、人が少ない時間を狙ってお散歩くださいませ。

ちなみに奈良市に宿泊できる時には必ず朝拝に参列します。宮司様を始めとする神職の方と一般の参拝者が一緒に大祓詞を奏上し、宮司様からお言葉をいただき、神職の方の解説付きでご一緒に境内の摂末社をお参りできる素晴らしすぎる体験ができます。今はまだ感染症拡大の影響で、朝拝に一般のご参列は中止されていますのでご注意下さい。

途中から春日大社さんの勝手に広報室になってしまいましたが、神様のお使いとして、時にその動物たちを通して神様の存在や御神威、自然の恵みなどを感じられる、日本人の感性の大らかさと自然の中で生まれた神道の奥深さがとても心地のいいものに感じられます。

来年の干支、寅。これは虎のパンツあたりからインドの神様のお話になりそうなので、節分の頃の禰宜のブログをお楽しみに。

たくさん歩いて痩せたかと期待しましたが、それ以上に食べました。シカたがない。

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