常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

君の名は

このタイトル名、「前、前、前世から僕は~♪」もしくは「真知子巻き」、はたまた「鈴木京香」と、世代別に頭に浮かぶイメージが違うのではないでしょうか。(佐田啓二が好きな私は真知子巻きも知っています!)

すみません。今日は映画やドラマの話ではなく、「命名」のお話。

当宮では赤ちゃんの命名のご依頼をいただきます。そのほとんどは宮司が命名しています。

私は「名付け」が苦手。みんなでチーム名を決めようとか、モノや動物に名前をとか、子どものころから、なんか苦手。真剣に考えすぎてしまうんですよね。

早速余談ですが、以前、無農薬でぶどうを育てる地方のワイナリーに行った時のこと。農薬を使わないので、雑草除去の為に何頭かの羊が放たれていました。ワイナリーではその羊毛を使った雑貨があったり、羊のイラストが随所にあり可愛らしい雰囲気。近くにいた若い女性が「羊さんの名前を教えて下さい。」と無邪気に尋ねると、「雑草用の家畜だし、名前なんて付けねえよ。食用にもなっちゃうんだから。」とご主人。都会から来ていた女子大生(勝手な想像)、絶句していました。そう、馬や牛はまだしも兎や鶏などの家畜に農家の方はあまり名前をつけません。せいぜい、「べこ!」なんて声を掛ける程度。べこは方言なだけです。(会津弁で牛のこと。)家畜はもちろん大事にしていますが、やはり名前を付けるということは愛着を持つ、持ってしまうということです。

そろそろ神職になって20年近く経ち、命名について相談をお受けするときに、私個人の考えとしてお話しすることがあります。いくつか挙げるとしたら、字画、字面、漢字(ひらがな)の意味、音の響き、その他です。それぞれここでは詳しく書ききれませんが、当宮にご相談の方は、完全に名付けて欲しい場合と、両親などが考えられた名前や使いたい漢字が良い名前かどうかを判断して欲しい場合の2つに大きく分かれます。前者の場合は字画等を踏まえ、最善の名前を考えます。識字率や就学率が低かった時代は前者のほうがスタンダードで、名前は神社の宮司さんやお寺のご住職さんから「授かる」ものだったのでしょうが、現代では後者の場合のほうが断然多いです。

字画は調べればわかるのでここでは割愛して、その他の大切なことから。まずは何といってもご両親の思いです。どんな子に育って欲しいのか。一番重要に想うことは何か。将来子どもに名前の由来を話せることは、結構大切なことではないかと思います。私自身、命名してくれた母はすでに他界していますが、聞かされた由来は、時折思い出すと励みになります。字面、漢字の意味、音の響きに関しては、まずは紙に書く。ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、全部書く。そして声に出して読む。これをすると見えてくるのは、漢字の場合、「へん」と「つくり」のバランス、ひらがななら苗字と名前の間に変な感じや、違和感のある音がないかなどです。例えば「林林さん」という苗字があったとして、偏と旁が線対称なので、名前も「林林」にすると氏名が左右に分かれてしまうのです。いくつか候補がある場合、書いたり読んだりしていると、しっくりとくる名前が見つかったりします。でも命名については奥深く、やはり対面で話さないとニュアンスも難しいのでまたそのうちに。

話は飛びますが、以前ニュースで、鎌倉市が由比ガ浜など3か所の命名権を売りに出し、「鳩サブレー」で有名な豊島屋さんが年間1200万円(10年契約)で購入し、「海水浴場」を加えただけの「そのままの名称」に決定したというお話がありました。豊島屋の社長さんの郷土愛と懐の深さを感じずにはいられません。各地で資金繰りなどのために命名の権利が売買され、いつのまにか縁もゆかりもない名前に変わってしまっていることがあります。市町村合併による地名の消滅も然り。祖先が意味を持って付けた名前には大切なメッセージがあるはずです。

ところで、不二家のペコちゃん。赤のオーバーオールといい、あの首振りといい、私の郷土・会津の赤べこから命名してますよね?

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