常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

なんてったって春

ここ数年、桜はソメイヨシノよりヤマザクラ、なんなら桜より梅、渋谷より日本橋、新しい大河ドラマが始まったのに未だ太平記を見終わらない。(真田広之さんは今も昔も素敵)そのうち石や苔を愛でたりしているかも…。という先日40歳になった私です。

3月の神職日記は何を書こうか、とても悩みます。1都3県の緊急事態宣言延長、別れの季節、そして東日本大震災から10年。震災については、いろいろ思うところはありますが、言葉にすると凄く重いか薄っぺらになりそうです。震災で多くの悲劇がうまれ、家族を亡くす悲しみに対しては、思いを寄せ、祈り続けてきた気がします。私事はまた、いつかの機会に書ければと思います。

最近手にした冊子で、カルビー株式会社の伊藤秀二代表取締役社長兼CEOのお話を読みました。伊藤社長も福島県のご出身。高校を卒業後に上京、大学を卒業後に入社されたカルビー一筋の方です。47都道府県ご当地限定のポテトチップスは社長になられて出されたアイディアの一つで、ポテトチップスで地域おこしまでしています。震災当日は東証で一部上場したまさにその日。鐘を鳴らし、余震の中で会見を開いていたそうです。午後のパーティーは中止となり、すぐさま震災対策本部が設置され、対策本部長に。

その後、ロート製薬さん、カゴメさんとともに発起企業となって公益財団法人を設立。震災遺児の奨学基金「みちのく未来基金」を立ち上げました。返済不要で上限300万円。審査はなく、震災で親を亡くした証明さえあれば誰もが受けることができます。震災時に0歳だった子どもが大学を卒業するまで支援を続けようとすると、試算では約50億円を必要。一般の方からの寄付が10年経った今でも減らず、この先の十数年のめどがついたそうです。

いかにんじん食べたことあるかな。松前漬と間違えてるかも。(画像はカルビーHPより引用)

「人に投資する」。壊れたものを直したり寄付するよりも、伊藤さんが大切に思われたことがこれです。目新しい言葉ではないかもしれません。でも、コロナ禍でリモートワークが認知された昨今ですが、カルビーさんは20年前から取り組んでいます。今では社員の1割しか日に出勤していないとか。「大企業だから」と他人事に聞こえるかもしれませんが、大所帯だからこその壁も想像に難くなく、人事の難しさやコスト面、コミュニケーション、個々の意識の方向性など、素人考えでもいろいろ浮かびます。働き方改革は働く人にとっての改革にならなければ絶対に失敗すると伊藤さんは言います。

神社界はというと、働き方について、保守的というより恐らく思考を停止させてきたように思います。コロナ禍では、全国の大小のお宮が、リモートワークを取り入れたり、交代制の勤務態勢、時には休所日(休館日)を設けてみたりと様々な対策を取りました。神社は神様がそこにいらっしゃって、人が神様のもとへ足を運ぶという根本があるので、課題は山積ですが、貴重な経験になったと思います。「これまで」の歴史の記録から現代に合わせて変化させること、何百年、何千年と続く「これから」の為に試み続けること。より良く次世代にバトンを渡す中継者として最善を尽くすということは、先人もしてきた積み重ねです。

ゆっくりと観ている大河ドラマの太平記、ようやく建武の新政(建武の中興)を果たすも、京都や戦場となった各地の荒廃はすさまじく、公家と武士に何やら恩賞や処遇をめぐって不満がくすぶり始めています。毎回とても面白いです。そして、あの時代に比べたら、今のなんと恵まれていること。

さて、別れの3月は出会いの為の準備期間でもあります。皆様、良き春をお過ごし下さい。

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