常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

菊の伝承

皆様お疲れ様です。

気候の変化が激しい今日ですが、どうか体調に気をつけてお過ごしください。

 

さて、いろいろなイベントを催した園遊会も終盤を迎えました、これまでにご協力、ご参加くださいました方々ありがとうございます。残るは地酒とサウナのイベントになりますが、特に今年新しく開催される神社でサウナのイベントが面白そうですので、興味のある方は是非ご参加下さい。

 

さらに、園遊会で境内を彩る菊花ですが、実は園遊会が始まる直前まで、こんなに沢山の菊を飾れる予定ではなかったのです。生産者の高齢化や夏の猛暑の影響でこれまで奉納頂いていた方々も今年は難しいということで、一時は奉納者がゼロという事態となりました。それを見かねてか、皆様が方々に声をかけて下さり、結果過去最多の菊花で境内を飾ることができました。

 

その奉納頂いた菊花の中の一つについてのことですが、その方とは以前の職場の頃からの知り合いで、今年の園遊会に菊花が集まらないということで十数年ぶりにお会いし相談させていただきました。聞くとその方は数年前に病気をされて、手にしびれが残ってしまい菊の栽培も辞め、リハビリ程度に一鉢だけ栽培しているという状況でした。

 

久しぶりにお会いできただけでも嬉しかったのですが、当時のバリバリ菊を栽培されていた姿を知る自分にとっては、少し寂しい思いも感じました。その際はそういった事情で今は菊を奉納できないというお返事でお別れしたのですが、後日その方の娘さんからご連絡を頂き、一鉢だけ栽培したものでよければ奉納させていただきたいということでした。

 

その方は全国でも活躍されていた菊の名人で、凄い技術と発想を持たれた方で、確か菊を始めてからわずか数年で日本一になられたと記憶しています。そんなとてつもない菊を栽培されて、身長よりも高いトロフィーを見せていただいたこともありましたが、その時と比べるとご奉納頂いた菊は確かに見劣りしてしまうのですが、自分にとってはとてもとても貴重な菊なのです。

本当は人前に出せるような菊ではないので、名前は伏せて飾ってほしいとのことでしたので、奉納者名を公表せずに飾らせていただいていますが、現在最盛期を迎えて沢山の参拝者に喜んで頂いています。

 

今回奉納して頂くにあたって、その方のお弟子さんが手直しをされたとのことなのですが、実はそのお弟子さんも知り合いなのですが、そのお二人の関係は十数年前にさかのぼります。元はお弟子さんのお父様が菊を栽培されていて、その年も品評会に向けて栽培されていたのですが、その途中でお父様が亡くなられてしまい、手入れされずに荒れていく菊を見かねてお子さんであるお弟子さんがそれを引き継ぎ、まだ素人だったのでそこで手を貸したのが師匠ということです。その甲斐あって無事に品評会に出品することができ、大会側はそのお弟子さんに特別賞を与え、あの涙の表彰式は思い出すと今でも泣けてきます。

 

お弟子さんはその後も師事を仰ぎながら菊栽培を続けられていたようで、今年は優勝されたそうです。今回の手直しも師匠への恩返しだったのだと思います。

 

当時から面倒見のよい方で自分も過去に何度も助けて頂いたのですが、十数年経ってまた助けて頂くことになってしまいました。どうかお身体が回復され、また菊栽培に励まれることをお祈りしています。

 

園遊会に飾られている菊はそれぞれに生産者が思いを込めて手塩に掛けて育てられたものです。まだまだ綺麗に咲いていますので是非見に来て下さい。

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