常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

紅白の乙女たち

ちょっとパワーダウンしていた私も3月に入ってからは徐々に復活してきました。毎日花開いていく庭の梅の木を眺めて春を感じています。

実は今、まさに花を育てている真っ最中です。新人巫女さんのことです。

お正月の臨時奉仕を終えて、正式採用をした巫女さんが5名。先日は茨城県桜川市に鎮座する磯部稲村神社の磯部先生にお越しいただき、一日みっちり巫女舞の基礎を教えていただきました。磯部先生は私が笠間稲荷神社に奉職していた際にお世話になっていた女子神職の大先輩で、神社音楽協会の講師として全国の巫女さんに祭祀舞を教えていらっしゃいます。

舞の研修に続き、来週は巫女として奉仕する上で必要な研修をします。禰宜以下それぞれに指導者として講義する内容があり、心得や作法、実務などを研修してもらいます。

これまではやっていくうちに徐々に覚えてもらうような感じで、研修としてじっくり時間をかけてこなかった、できなかった現状がありました。今年は私を含めた権禰宜たちは、限られた時間でいかに伝えられるかを考えながら資料を作ったりシミュレーションをしながら、社務全般を俯瞰的に見直す良い機会にもなっています。

20代の自分を振り返ると恥ずかしいことこの上ない。神職という仕事はご年配の方や企業の社長さんなど人生経験豊富な方と接する機会も多く、若輩の私は恥を掻いてきましたが、多くの方に厳しく温かく育てていただいた思い出があります。いまでも大した成長はないような気もしますが、若い頃の失敗や掻いておく恥はその後も忘れることなく自分の糧になるものと思っています。「きゃっと叫んでロクロ首」の心境はいまでもあります。(大好きな吉行淳之介のエッセイからの言葉です。意味が気になる方はご参照を。)

3月11日、東日本大震災から11年を迎え震災復興祈願並びに物故者慰霊祭を斎行しました。

当宮の被害は大鳥居の破損、燈篭や玉垣の倒壊など多岐にわたるものがありましたが、幸い職員やご参拝者に被害もなく、禊場と水源を同じくする御神井は変わらず湧き出ていたため給水に訪れる方もいらっしゃいました。

当時、石岡市内は数日間の断水と断続的な停電になり、物資の運送もままならずにどのお店も商品は品薄。よく行く近所のコンビニも例外ではありませんでした。ある日、夫と僅かな食糧をカゴに入れ、非常灯のみの薄暗いコンビニのレジに並ぶと、私たちの2,3人前でついにレジの電源が落ちてしまいました。店長さんが「すみません。今日はもう会計ができないので…」と店じまいを口にした瞬間、レジ打ちをしていた女子高生2人が自分の携帯のライトで手元を照らし「まだ大丈夫です。電卓で対応します!」とそのまま接客を続行しました。

そもそもこんな非常事態にアルバイト先に来ている2人。あの懸命な接客には何かの、誰かの役に立とうとする強い思いがあったような気がして何年経っても忘れられません。

これからマニュアルや一般常識もたっぷり覚えてもらわなければならない新人巫女さんたちですが、神様や人に対する「まごころ」を一番大切にご奉仕してほしいなと思っています。

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