9月4日 令和4年常陸國總社宮例大祭において年番を務める中町で仮殿地鎮祭が行われました。
仮殿とは文字通り神様が一時的に鎮座する「仮の社殿」のことです。お祭りで神社からお神輿が出る時、元の神社に戻って来る場合と、別な場所に鎮座する場合があります。御神輿が神社に戻って来ず、別な場所に鎮座する場合に、鎮座地に建てられるものが仮殿です。
この他、社殿の改築・修理の際、一時的に御神体を遷す社も仮殿と言います。現在 常陸國總社宮例大祭で使われている仮殿も、平成28年に本殿を修復するため、境内に建てられた仮殿が使用されています。
總社宮の例大祭は神社から御神輿が出御し、街中に2泊鎮座しますが、鎮座地は決まっておらず年番加盟町の15の町内が持ち回りで自町内に神様をお迎えしています。仮殿は普段は解体された状態で總社宮の境内に保管されており、その年の年番町は仮殿を建てる場所を選んで、地鎮祭を行い總社宮から部材を移動させて社を建てます。仮殿は神輿の鎮座する社殿と鳥居、灯籠、手水などでできていますが、各年番町は大神様をおもてなしするため風雅な庭園を造るなど趣向を凝らしており、鎮座地の地形が異なることもあって毎年個性ののぞく仮殿が見られます。
三連休の初日、常陸國總社宮拝殿で神幸祭発輿式が行われます。御分霊が遷された大神輿は白丁をまとった200人もの男たちに担がれ、街中を練り歩いて年番町の仮殿に鎮座します。仮殿が建てられる町内が毎年違うので、もちろん巡幸路も毎年違います。また年番町は町の隅々に御神徳を届けるため、渡御と還御ではなるべく異なる道を通るように考慮して巡幸路を決定します。
仮殿に鎮座した御神輿はそこで2夜を過ごします。この間、仮殿には各町の山車や獅子が訪れ、御分霊に舞やお囃子を奉納します。
仮殿を訪れる冨田町のささら。ささらは冨田町のみが有する風流物で供奉行列では露祓を務めます。
お祭りとは言うものの神職は期間中に行われる神事の準備で忙しく、街中で行われる神賑行事の様子を見ることはできないので、実はこの仮殿での御奉納が例大祭期間中の私の密かな楽しみだったりします。
神賑行事2日目の奉祝祭の夜には仮殿祭が斎行され、常陸國總社宮の巫女による浦安舞が奉奏されます。巫女さんたちは普段、拝殿や神楽殿など、平坦で足元の心配をする必要のない広い板の間で舞いを行いますが、仮殿で舞えるスペースは2畳ほど。1年で最も過酷な状況での舞と言えるでしょう。
2人舞ですので巫女さんたちは腕がぶつかったり、扇の紐が絡んだりしないよう、細心の注意を払って舞います。特に前後の幅が狭く、神前に向かって座った状態から足を引いて立ち上がる時は傍で見守る我々も緊張してしまいます。
最終日、仮殿発輿祭が行われ、神輿が本宮へと還ると仮殿は役目を終えて解体されます。仮殿が社として機能するのは御神輿に遷された御分霊が鎮座してから出御するまでの間、僅か3日間のみです。
今回の例大祭では3年ぶりに神賑行事が行われ、中町に仮殿が出現します。例大祭期間中に当宮に御参拝の方はぜひ仮殿にもご参拝ください。