常陸國總社宮

神職日記|4人が語る、神様と暮らす日々。

~日本とインドの御縁~10月2日「愛染祭」が行われます。

明日、10月2日に常陸國總社宮では「愛染祭」が行われます。
この行事は境内にある「愛染神社」という小さな社の例祭日(縁日)に併せて企画されました。
催しは外務省の「日印交流70周年記念事業」に認定され、日本とインド両国の文化などが体験できるものとなっています。
まず愛染神社のことを簡単に説明しましょう。この神社はもともと愛染明王を祀るものであり、いわば神仏習合時代から続く存在と言えます。
愛染明王とは仏教、特に密教の信仰対象である明王の一つ。明王とは人々を仏教に帰依させる存在で、不動明王のように恐ろしげな姿で描かれるものもあります。愛染明王は古代インドのサンスクリット語では「ラーガ・ラージャ」と呼ばれ、三つの目、六本の腕、赤い肌で描かれ、頭には獅子の冠を被っているとされます。

愛欲の煩悩を悟りに変える存在などと説明され、恋愛や縁結びの御利益があるとされますが、愛染の文字が「あいぞめ」と読めることから、「藍染」を生業とする方々からも信仰されることになりました。

常陸國總社宮の境内にある愛染神社は、かつて旧石岡市にいくつか存在していた染物業者さんたちの崇敬により祀られたもので、祠の隣にある石碑には奉納された業者さんの名前が刻まれています。企画の一つとして「藍染体験ワークショップ」を行って下さる「まち蔵藍」は元々、愛染神社の講中である丁子屋さんの建物にあります。

愛染神社・愛染明王はそういうわけでインドで生まれた仏教と、日本固有の神道が合体した「神仏習合」という文化が感じられる場所なのですが、10月2日にはもう一つ、インドにまつわる「御縁」があります。それはこの日が皆さんもよく知っている「ガンジー」ことマハートマー・ガーンディ―の誕生日なのです。

私は愛染神社の縁日とガンジーの誕生日が同じである御縁を形に出来ないかと数年前から考えていました。幸い今年令和4年の10月2日は日曜日で、何か催事を企画するにはもってこい。このことをいつもお世話になっている江戸文字書家の橘吉也さんとお話する中で、愛染祭の構想がどんどん膨らんでいきました。橘さんも職業柄染物を扱うことが多く、愛染神社には以前から心を寄せて下さっていました。たまたま以前、例祭日に境内におられた橘さんに、神職のみで行っていた神事にご参列いただくという御縁もありました。橘さんもこの御縁を大事にされ、「愛染神社」と書かれた大きな提灯を一対御奉納いただき、愛染祭の実行委員長をお引き受け下さいました。

私の研究者としての専門は「前近代の日印関係史」。つまり日本とインドの関係について専門に勉強しています。ガンジーについても学生時代に伝記を読んで以来、その思想に心を惹かれてきました。いろいろな御縁が重なり、今回の愛染祭が行われることになったのです。

行事のメインイベントの一つである講演を行って下さるのは「よぎ」ことプラニク・ヨゲンドラさん。

全日本インド人協会の会長を務められています。在日インド人の数は年々増えていますが、日本最大級のコミュニティがあるのが江戸川区西葛西。よぎさんは在日インド人社会の中心として活動され、かつてはインド出身者として初めて日本で政治家(江戸川区議会議員)となりました。以前からニュースなどでよぎさんの存在を知り、いずれお会いしてみたいと念願していた私。今回突然のお願いにも関わらず講演を引き受けて下さったよぎさんには深く感謝しています。よぎさんにはインドの民族衣装をお借りして、着付け体験を行います。NPO法人きもの文化を大切にする会さまのご協力により着物の着付けもしていただけますので、講演会には是非両国の民族衣装でお越しいただければと思います。

 

インド音楽のコンサートを行ってくださる井上貴子先生は南アジア学会の理事長も務められた、インド研究の大先輩。平成30年(2018)にデリーで行われた、日印関係についての国際シンポジウムで初めて直接お話させていただきました。井上先生はインド音楽研究の第一人者であるとともに、自ら演奏もなさるプレイヤーでもあります。私の不躾なお願いを快諾して下さり、プリヤダルシニ・プラカーシュさん、竹原幸一さんとともに出演して下さることになりました。

また、私の研究成果として以前東京外国語大学のAGS学会で発表した「天竹神社」の棉祖祭についてのパネル展示もございます。写真は天竹神社の総代さんと、西尾市観光協会さんからご提供いただいたものもあります。天竹神社は日本で初めて綿花の種をもたらしたと伝えられる崑崙人(天竹人)を祀る、これまた日印の関係の深さを物語る神社です。

そして、以前「総社マルシェ」を企画してくださった「ひたちのくにのマーケット」さんのご協力を頂き、境内では和雑貨、民族雑貨や、カレー味を楽しめるお店が立ち並びます。

授与所では冒頭の限定御朱印や、愛染祭の限定、手作り藍染御守り、橘吉也さんの「縁」の文字が入った絵馬を授与しています。いずれも10月いっぱいの授与となる予定です。

夕方17時からは常陸國總社宮による愛染神社の例祭の祭典が営まれます。愛染明王の力が一番高まる本日、縁結びなどの祈願をされる方や、記念に提灯を奉納される方、皆様にご参列をいただく予定です。祈願、奉納は当日でも受付しています。祭典のあとはささやかな直会(交流会)もございます。

例大祭の興奮も冷めやらぬ10月の頭に多くの御縁と皆さんの協力により新しい催事が行えることを私自身とても楽しみにしています。皆様の御来宮を心からお待ちしております。

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